モチタン辞典 › 読みもの › 中国語 › 中国語の意味上の受け身文

中国語の意味上の受け身とは?被を使わない文法ルールと例文
中国語の「意味上の受け身」とは、動作を受ける目的語(主に無生物や事物)を文頭の主語に置き、介詞の 被(bèi / 〜される)を用いずに「〜が…された」「〜が…してある」という状態や結果を表す構文です。
中国語では被害や迷惑のニュアンスを含まない客観的事実を述べる際、受身記号を使わずに「主題(テーマ)+解説(コメント)」の語順で表現するのが自然な語法です。
中国語の意味上の受け身の仕組みと基本公式
中国語の受身表現には、介詞である 被(bèi)、叫(jiào)、让(ràng)を用いる「受身文(被構文)」のほかに、これらの介詞を一切使わずに受動の意味を表す構文が存在します。これを文法用語で「意味上の受け身(あるいは無マーク受身文)」と呼びます。
文法的な定義と基本構造
意味上の受け身では、本来は動詞の後ろに置かれるはずの「動作・行為の受け手(目的語)」が、文頭の主語の位置に配置されます。このとき、主語には多くの場合「事物」や「無生物」が立ちます。
基本の語順公式は次の通りです。
例えば、信写好了(xìn xiě hǎo le / 手紙は書き終わりました)という文を見てみましょう。本来「手紙を書く」という動作において、「手紙」は書かれる対象(目的語)です。
しかし、この文では 信(xìn / 手紙)が主語の位置に置かれ、介詞 被(bèi)を挟まずにそのまま述語動詞 写(xiě / 書く)と結果補語 好(hǎo / 完了を表す)、文末助詞 了(le / 変化・完了)へと続いています。
言語学的な位置づけ:主題・解説構造
中国語は言語学的に「主題優勢言語(トピック・プロミネント言語)」と呼ばれ、文頭に「これから話題にする対象(主題・テーマ)」を提示し、その後に「その対象がどうなったか(解説・コメント)」を述べる構造を好みます。
つまり、信写好了(xìn xiě hǎo le)という文は、発話者の意識としては「手紙が誰かに書かれた」という受身の意識ではなく、「手紙についてはね、もう書き終えた状態だよ」という主題提示の感覚で組み立てられています。そのため、わざわざ受身の標識である 被(bèi)を挿入する必要がないのです。
動詞単独で終わらせてはいけない絶対ルール
意味上の受け身において極めて重要な規則が、「動詞単独で文を終えてはならない」という点です。動作が事物主語に対して行われた結果、どのような状態になったのかを確定させる付加成分が不可欠となります。
- 不自然:*信写。(動詞単独のため文として成立しない)
- 自然:信写完了。(xìn xiě wán le / 手紙は書き終えました:結果補語 完 を付加)
- 自然:信寄走了。(xìn jì zǒu le / 手紙は郵送されました:方向補語 走 を付加)
信写好了手紙は書き終わりました
事物主語の後に動詞と付加成分を続け、介詞なしで受動の意味を表します。
なぜ被を使わないのか?被構文との使い分け判定基準
日本語の母語話者は、「〜される」「〜された」という日本語の受動態につられて、何でも 被(bèi)を使ってしまいがちです。しかし、中国語の 被 には固有のニュアンスがあり、客観的事実に用いると不自然な中国語になってしまいます。
「被構文」と「意味上の受け身」のニュアンスの違い
中国語の 被 構文は、歴史的に「被害」「不愉快」「迷惑」「損失」といった望ましくない事態を表す文脈で発達してきた構文です。現代中国語では中立的な事実や好ましい文脈で用いられる例も増えているものの、依然として「好ましくない影響を受けた」という含みが強く残っています。
一方、意味上の受け身は、単なる「事物・状況の客観的な処理状況や変化」を淡々と報告・描写する表現です。ここに 被 を入れてしまうと、奇妙な被害意識が文に生じてしまいます。
| 項目 | 意味上の受け身 | 被構文(被・叫・让) |
|---|---|---|
| 主語の性質 | 主に事物・無生物(動作を受ける対象) | 人または事物(影響・被害を受ける側) |
| 感情・ニュアンス | 客観的・中立的(事実や状態の描写) | 主として被害・不愉快・迷惑・不測の事態 |
| 動作主の明示 | 原則として言及しない(不問または不特定) | 明示することも省略することも可能 |
| 動詞の後ろ | 結果補語、完了「了」などが必須 | 補語、「了」、目的語などが必須 |
| 代表例文 | 饭做好了。(ご飯ができました) | 手机被偷了。(携帯を盗まれました) |
使い分けを即座に判断する3ステップフロー
作文や会話で「この文に 被 を使うべきか、意味上の受け身にすべきか」迷ったときは、次の3つの手順で確認してください。
- ステップ1:その事態に「被害・不快・損失」のニュアンスがあるか?
→ ある場合(例:財布を盗まれた、雨に降られた、叱られた):被 構文を使用します。
→ ない場合(客観的な完了や状態変化):ステップ2へ進みます。 - ステップ2:動作主(誰がやったか)を特別に強調する必要があるか?
→ ある場合(例:この絵は魯迅が描いたものだ):受身ではなく 是〜的(shì...de)構文を使用します(例:这幅画是鲁迅画的。)。
→ ない場合(誰がやったかは自明、または問題ではない):ステップ3へ進みます。 - ステップ3:主語が無生物・事物であり、動作の結果や処理の完了を述べているか?
→ はい(例:服を洗った、宿題を提出した、ビルを建てた):意味上の受け身 を使用します。被 は付けません。
被害・不快・損失があるなら被構文を使用
誰がやったか強調するなら是〜的構文を使用
客観的な事実や状態変化なら意味上の受け身
被害ニュアンスや動作主の強調の有無を確認して適切な構文を選びます。
意味上の受け身で頻出する動詞と付加成分の一覧
意味上の受け身を正しく組み立てるためには、述語動詞の後ろに添える「結果補語」や助詞の組み合わせを理解しておくことが欠かせません。よく使われる鉄板のコロケーション(連語関係)を整理しました。
表は横にスクロールできます →
| 動詞+付加成分 | 読み | 日本語の意味 | 例文 |
|---|---|---|---|
| 做好 | zuò hǎo | 仕上がる・準備ができる | 晚饭做好了。(夕食ができました。) |
| 洗干净 | xǐ gān jìng | きれいに洗われる | 衣服洗干净了。(服がきれいに洗えました。) |
| 修好 | xiū hǎo | 直る・修理が完了する | 电脑修好了。(パソコンの修理が直りました。) |
| 卖光 | mài guāng | 売り切れる・完売する | 票已经卖光了。(チケットはもう売り切れました。) |
| 准备好 | zhǔn bèi hǎo | 準備が整う | 资料都准备好了。(資料はすべて準備ができました。) |
| 写完 | xiě wán | 書き終わる | 作业写完了。(宿題は書き終わりました。) |
| 安排好 | ān pái hǎo | 手配が完了する | 日程都安排好了。(日程はすべて手配がつきました。) |
| 打扫干净 | dǎ sǎo gān jìng | 掃除されてきれいになる | 房间打扫干净了。(部屋はきれいに掃除されました。) |
| 发送了 | fā sòng le | 送信・発送された | 邮件已经发送了。(メールはすでに送信されました。) |
| 解决了 | jiě jué le | 解決された | 问题顺利解决了。(問題は無事に解決しました。) |
これらの表現に共通しているのは、動詞の後に結果補語の 好(hǎo / 満足な状態への到達)、完(wán / 動作の終了)、光(guāng / 残りがないこと)、あるいは完了の 了(le)が置かれ、主語である事物の「現在の確定した状態」を示している点です。
中国語の文法は、話して身につけよう。会話アプリ「モチスピ」中国語を話して練習できる会話アプリ。話すたびに、発音・文法・自然さをその場で直してもらえます。無料で試す
日本語で受身でも中国語では被を付けない動詞リスト
日本語のニュースや日常会話では「〜が開かれる」「〜が建設される」「〜が発表される」のように受動態が日常的に使われます。しかし、中国語でこれらを直訳して 被 を付けると、不自然な文になります。客観的事実として意味上の受け身を用いる代表的な動詞を確認しましょう。
1. 開催・実施を表す動詞:开(kāi)・举行(jǔ xíng)・召开(zhào kāi)
会議や式典が「開かれる」「開催される」という場合、中国語では対象となる会議を主語にし、そのまま動詞を続けます。
- 运动会如期举行。(yùn dòng huì rú qī jǔ xíng / 運動会は予定通り行われました。)
- 会议开了两个小时。(huì yì kāi le liǎng ge xiǎo shí / 会議は2時間開かれました。)
- 不自然:*运动会被举行了。(被害の意味がないため誤り)
2. 建設・設立を表す動詞:建(jiàn)・修(xiū)・成立(chéng lì)
建物や組織が「建てられる」「創立される」場合も、事物主語の後に直接動詞を配置します。
- 新大楼建好了。(xīn dà lóu jiàn hǎo le / 新しいビルが建ちました・建設されました。)
- 公司是去年成立的。(gōng sī shì qù nián chéng lì de / 会社は昨年に設立されました。)
- 不自然:*大楼被建了。
3. 公開・発表・発売を表す動詞:公布(gōng bù)・发表(fā biǎo)・出版(chū bǎn)
情報や書籍が「発表される」「出版される」際も、介詞なしで表現します。
- 考试结果公布了。(kǎo shì jié guǒ gōng bù le / 試験結果が発表されました。)
- 这本小说去年出版了。(zhè běn xiǎo shuō qù nián chū bǎn le / この小説は去年出版されました。)
- 不自然:*考试结果被公布了。
4. 売買・消費を表す動詞:卖(mài)・花(huā)
「商品が売れる」「お金が使われる」という文脈でも、主語に品物やお金を置いてそのまま動詞を用います。
- 新产品卖得很好。(xīn chán pǐn mài de hěn hǎo / 新商品はよく売れています。)
- 钱都花光了。(qián dōu huā guāng le / お金は全部使われてなくなってしまいました。)
- 不自然:*新产品被卖了。
開催・実施
- 开
- 举行
- 召开
建設・設立
- 建
- 修
- 成立
公開・発表
- 公布
- 发表
- 出版
売買・消費
- 卖
- 花
日本語で受身になりやすい動詞も、中国語では事物主語に直接続けます。

場面別で使いこなす意味上の受け身の定番例文20選
日常会話やビジネスの実務でそのまま使える、意味上の受け身の代表的な例文を場面別にご紹介します。
日常生活・家事の場面
- 衣服洗好了。(yī fu xǐ hǎo le / 服が洗えました。)
- 地扫干净了。(dì sǎo gān jìng le / 床の掃除ができました。)
- 门锁上了。(mén suǒ shang le / ドアの鍵はかかりました。)
- 水烧开了。(shuǐ shāo kāi le / お湯が沸きました。)
- 药吃过了。(yào chī guo le / 薬はもう飲みました。)
オフィス・業務連絡の場面
- 合同签好了。(hé tong qiān hǎo le / 契約書にサインが完了しました。)
- 报告提交了。(bào gào tí jiāo le / レポートは提出されました。)
- 发票开好了。(fā piào kāi hǎo le / 領収書の発行ができました。)
- 会议室预订好了。(huì yì shì yù dìng hǎo le / 会議室の予約が取れました。)
- 翻译已经完成了。(fān yì yǐ jīng wán chéng le / 翻訳はすでに完了しました。)
店舗・ショッピング・配送の場面
- 行李寄出去了。(xíng li jì chū qu le / 荷物は発送されました。)
- 包裹收到了。(bāo guǒ shōu dào le / 小包は受け取りました・届きました。)
- 菜上齐了。(cài shàng qí le / 料理がすべて揃いました。)
- 账结过了。(zhàng jié guo le / お会計はもう済みました。)
- 杯子打碎了。(bēi zi dǎ suì le / コップが割れました。)
社会・アナウンス・出来事の場面
- 道路修好了。(dào lù xiū hǎo le / 道路の工事が終わりました・開通しました。)
- 问题查清楚了。(wèn tí chá qīng chu le / 問題の全容が明らかになりました。)
- 通知发出去了。(tōng zhī fā chū qu le / お知らせ・通知が発信されました。)
- 活动顺利结束了。(huó dòng shùn lì jié shù le / イベントは無事に終了しました。)
- 任务按时完成了。(rèn wu àn shí wán chéng le / 任務は期日通りに完了しました。)
会話全体の表現力を広げたいときは、中国語の日常会話フレーズも参考になります。
学習者がやりがちな誤用添削と是〜的への切り替え
日本人学習者が陥りやすい典型的な誤用パターンと、正しい表現への直し方を解説します。
誤用例1:客観的な開催・告知に「被」を使ってしまうミス
- 不自然:*奥运会成功被举办了。
- 自然:奥运会成功举办了。(ào yùn huì chéng gōng jǔ bàn le / オリンピックは無事に開催されました。)
- 解説:オリンピックが無事に開催されたことは喜ばしい客観的事実であり、被害を表す 被 を挟むと不自然です。事物主語+副詞+動詞+完了で表現します。
誤用例2:動詞の後ろに付加成分を付け忘れるミス
- 不自然:*这辆车修。
- 自然:这辆车修好了。(zhè liàng chē xiū hǎo le / この車は修理が完了しました。)
- 解説:意味上の受け身では、動詞単独で文を止めることができません。動作の結果どうなったかを示す 好 や 了 を必ず添えてください。
動作主を明示したいときは「是〜的」構文へ切り替える
意味上の受け身では、基本的に動作主(誰がそれを行ったか)を文中に明記しません。もし「誰がそれを行ったのか」という行為の主体を明確に示したい場合は、受身文にするのではなく、是……的(shì...de)構文を用いて動作主を強調するのが自然な語法です。
- 意味上の受け身(動作主不問):这篇文章写好了。(zhè piān zhén zhāng xiě hǎo le / この記事は書き上がりました。)
- 動作主を明示(強調構文):这篇文章是张老师写的。(zhè piān wén zhāng shì Zhāng lǎoshī xiě de / この記事は張先生がお書きになったものです。)
- 不自然な受身文:*这篇文章被张老师写了。(張先生に書かれて被害を受けたような奇妙な文になります)
客観的事実や好ましい出来事に被を使うと不自然になります。
動詞単独で文を止めず、好や了などの付加成分を必ず添えます。
誰が行ったかを明示したい場合は受身文ではなく是〜的を使います。
意味上の受け身を使う際に間違えやすい3つの重要ポイントです。
HSK・中検対策!意味上の受け身の実践演習テスト
HSK(漢語水平考試)や中国語検定の語順整序・正誤判定問題で頻出するポイントを、演習問題形式で確認してみましょう。
第1問:語順並べ替え問題
次の語句を正しい語順に並べ替えて、意味の通る文を作りなさい。
- 正解:这些衣服已经洗干净了。(zhè xiē yī fu yǐ jīng xǐ gān jìng le / これらの服はもうきれいに洗い上がりました。)
- 解説:受動の対象である 这些衣服(これらの服)を文頭の主語(主題)に据え、副詞 已经、動詞 洗、結果補語 干净、文末助詞 了 の順に並べます。受動を表す介詞が選択肢にないことから、意味上の受け身の語順を組み立てる問題だと見抜くことがポイントです。
第2問:語順並べ替え問題
次の語句を正しい語順に並べ替えて、意味の通る文を作りなさい。
- 正解:准备工作都已经做好了。(zhǔn bèi gōng zuò dōu yǐ jīng zuò hǎo le / 準備作業はすべて整いました。)
- 解説:事物主語である 准备工作(準備作業)を主題とし、その後に範囲を表す 都、時間を表す 已经、述語部分の 做好了 を配置します。
第3問:正誤判定問題
次の中国語文の下線部について、文法的な正誤を判定し、誤りがある場合は正しく直しなさい。
- 正解:誤り(正:下周的会议召开了。または 下周召开会议。)
- 解説:会議の開催は被害や迷惑を表す事態ではないため、介詞 被 を用いるのは誤りです。意味上の受け身として 被 を削るか、能動文として動詞を前に出す形に直します。
理解度チェック
Q1. 中国語の「意味上の受け身」文を作る際の絶対ルールはどれ?
- 主語に必ず人間を置く
- 介詞「被」を必ず動詞の前に置く
- 動詞単独で文を終えてはならない
- 文末に疑問詞を必ず付ける
答えを見る
正解: C. 動詞単独で文を終えてはならない
意味上の受け身では動詞単独で文を終えられず、結果補語や「了」等の付加成分が不可欠です。
Q2. 中国語の「被構文」が歴史的・本来的に持つニュアンスは?
- 被害・不快・損失などの望ましくない事態
- 客観的で中立的な事実の淡々とした報告
- 未来の予定や推量を表すニュアンス
- 動作の主体を単に尊敬するニュアンス
答えを見る
正解: A. 被害・不快・損失などの望ましくない事態
被構文は「被害」「不愉快」「迷惑」「損失」といった望ましくない事態を表す文脈で発達しました。
Q3. 誰がそれを行ったか動作主を強調・明示したい場合に使う構文は?
- 「把」構文
- 「是〜的」構文
- 「有」構文
- 「比」構文
答えを見る
正解: B. 「是〜的」構文
意味上の受け身で動作主を明示したいときは、受身ではなく「是〜的」構文を用いて強調します。
よくある質問
- Q. 意味上の受け身で動作主を入れることはできますか?
- 基本的には動作主を入れません。誰が行ったかを文中で示したい場合は、受身にするのではなく「事物主語+是+動作主+動詞+的」の強調構文を用いるのが自然です。
- Q. どんな動詞でも意味上の受け身にできますか?
- 目的語に対して直接影響や変化を与える「他動詞」に限られます。「知る(知道)」「好む(喜欢)」などの心理動詞や関係を表す動詞では作ることができません。
- Q. 被構文と意味上の受け身はどちらの使用頻度が高いですか?
- 日常会話では事物主語の意味上の受け身の方が頻繁に使われます。中国語の「被」構文は被害や望ましくない事態に偏るため、客観的描写では使わない傾向があります。
- Q. 否定文にする場合はどこに不や没を置きますか?
- 動詞の直前に「没(没有)」や「还没」を置きます。「晩ご飯はまだできていません」は「晚饭还没做好」となり、結果補語の前の位置で否定します。
- Q. 意味上の受け身の主語に「人」が来ることはありますか?
- 極めて稀ですが、文脈上明らかな場合(例:病人送医院了 / 病人は病院へ搬送された)など、人を客観的な事物や対象として扱うケースで使われることがあります。
2026年10月8日更新・モチタン辞典編集部