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広東語声調の完全攻略ガイド

広東語声調の完全攻略ガイド

広東語声調は「9声6調」と呼ばれますが、実際の音のメロディ(ピッチパターン)は基本の6種類しかありません。残りの3つ(入声)は、その6つのうち3つの高さを語尾の破裂音で短く止めただけの音です。

まずは音の高低差がはっきり分かる基本の6声をドレミ音階に置き換えて体得し、その後に詰まる音の入声を整理するのが最も効率的な習得ルートです。

広東語声調の全体像と9声6調の仕組み

広東語の発音を学び始めるとき、多くの学習者が「声調が9つもある」と聞いて圧倒されます。しかし、実際の発音原理を紐解くと、身につけるべき音の上がり下がりのパターン(調値)は6種類しか存在しません。これが「9声6調」と呼ばれる理由です。

中国語の伝統的な音韻学では、音節末が母音や鼻音(-m, -n, -ng)で終わって音を伸ばせる音を「舒声(じょせい)」、末尾が唇や舌で息を完全に塞ぐ閉鎖音(-p, -t, -k)で終わる短い音を「入声(にっせい)」と区別します。広東語の9つの声調の内訳は、舒声が6つ、入声が3つです。

入声に分類される第7声・第8声・第9声は、メロディとしては舒声の第1声・第3声・第6声とまったく同じ高さの平らな音です。ただ語尾を素早く詰まらせて発音する点だけが異なります。

そのため、現代の一般的な広東語ピンイン表記体系(粤拼表記など)では、声調の数字記号を1から6までの6種類のみに整理し、語尾の子音字によって入声かどうかを自動的に判別する方式が主流となっています。

つまり、広東語声調を攻略する第一歩は、「9つの異なるメロディを覚える」のではなく、「6つの基本メロディを安定して出し分けられるようにする」ことにつきます。舒声の6つの高低差を身体に定着させれば、入声は語尾を止める感覚を加えるだけで自然と発音できるようになります。

広東語9声6調の分類体系
広東語の9声

舒声(伸ばせる音)

  • 第1声(陰平)
  • 第2声(陰上)
  • 第3声(陰去)
  • 第4声(陽平)
  • 第5声(陽上)

入声(詰まる短い音)

  • 第7声(高入・1声と同調値)
  • 第8声(中入・3声と同調値)
  • 第9声(低入・6声と同調値)

9つの声調は音を伸ばす舒声6つと息を止める入声3つに整理されます。

独学での学び方を整理したいときは、広東語教科書の選び方・入門学習ガイドを参考にしてください。

基本6声の一覧表とピッチ調値の解説

広東語の基本となる6つの声調は、中国の言語学で広く使われる「5段階調値法(五度標調法)」で数値化されます。最も低い音を「1」、最も高い音を「5」として、音の始まりと終わりの高さを2桁の数字で表したものです。

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声調番号伝統的名称調値ピッチの動き代表例(漢字・読み・意味)
第1声陰平(いんへい)55(または53)最高音を高く平らに保つ(わずかに下降も可)詩(si1 / 詩)
第2声陰上(いんじょう)35中間の高さから最高音へ一気に引き上げる史(si2 / 歴史)
第3声陰去(いんきょ)33中間の高さをそのまま平らに保つ試(si3 / 試す)
第4声陽平(ようへい)21低めの位置から喉の力を抜いて最低音へ落とす時(si4 / 時間)
第5声陽上(ようじょう)23低い位置から中間の高さへとやや引き上げる市(si5 / 市場・都市)
第6声陽去(ようきょ)22低めの高さを低く平らに保つ是(si6 / 〜である)

表の通り、同じ「si」という音節であっても、声調が1声から6声まで変わるだけで詩(si1)、史(si2)、試(si3)、時(si4)、市(si5)、是(si6)と完全に別の意味になります。

広東語声調の構造的な特徴は、「平調(音の高さを変えずに伸ばす声調)」が第1声(55)、第3声(33)、第6声(22)と3段階も存在することです。北京語(普通話)には平調が第1声(高平)の1つしかありませんが、広東語では高・中・低の3段ベッドのように高さを明確に歌い分ける必要があります。

一方、斜めに動く声調としては、急激に駆け上がる第2声(35)、低く落ちる第4声(21)、低い位置から少しだけ持ち上がる第5声(23)があります。第2声と第5声はどちらも上昇調ですが、開始地点と到達点の高さが異なる点に注意してください。

次の疑問声調の高低差をつかんだら、母音や子音も含めた広東語の発音と読み方の全体像をあわせて整理しておくと定着が早まります。

ドレミ音階法と定番フレーズによる覚え方

広東語声調のピッチ変化を頭で理解しても、実際の会話で瞬時に再現するのは簡単ではありません。そこで現地や語学教育の現場で広く使われているのが、「ドレミ音階に見立てる方法」と「1〜6声が順番に並んだ定番フレーズを使う方法」です。

1. ドレミ音階による相対ピッチの把握

広東語の6つの声調は、音楽の音階(ド・レ・ミ・ファ・ソ)を当てはめると直感的に感覚を掴めます。自分の地声の出しやすい音域を基準に、以下のように音を割り振ってみてください。

この音階イメージを持つと、第1声(ソ)、第3声(ミ)、第6声(レ)という平調の3段階が整然と並んでいることがよく分かります。

2. 定番暗記フレーズ「三碗細牛腩麵」

声調の順番を体で覚えるための最も有名な語呂合わせが、香港の麺料理にちなんだフレーズ三碗細牛腩麵(saam1 wun2 sai3 ngau4 naam5 min6 / 牛バラ肉麺の小盛りを3杯)です。

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漢字ピンイン声調意味音階の目安
三saam1第1声数字の3高いソ
碗wun2第2声杯(器)ミからソへ上昇
細sai3第3声小さい中間のミ
牛ngau4第4声牛レからドへ下降
腩naam5第5声バラ肉ドからミへ上昇
麵min6第6声麺低いレ

このフレーズを「ソ・ミ↗ソ・ミ・レ↘ド・ド↗ミ・レ」というメロディに乗せて何度も口ずさむことで、1声から6声までの音の高さと動きが耳と喉に刷り込まれます。会話中に「この単語は何声だったか」と迷ったときも、このフレーズを基準の音叉として思い出すことができます。

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入声の仕組みと語尾の止め方

広東語を特徴づけるもうひとつの要素が「入声(にっせい)」です。古代中国語の発音を受け継ぐこの声調は、第7声・第8声・第9声とも呼ばれますが、実際には音の高さそのものは第1声・第3声・第6声と同一です。

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伝統的名称対応する基本声調調値末尾子音代表例(漢字・読み・意味)
高入(第7声)第1声(陰平)と同じ55-p, -t, -k八(baat3 ※調値55 / 数字の8)
中入(第8声)第3声(陰去)と同じ33-p, -t, -k百(baak3 / 数字の100)
低入(第9声)第6声(陽去)と同じ22-p, -t, -k白(baak6 / 白い)

入声を発音する最大のコツは、「日本語の『っ(促音)』の口の構えで息をピタッと止める」ことです。語尾のアルファベットによって、息を止める調音器官の場所が決まっています。

英語の p, t, k のように息を外へ破裂させて「プッ」「トゥッ」「クッ」と息を吐き出してはいけません。息を内側に閉じ込めたまま音をパツンと切る感覚を意識すると、自然な広東語の入声になります。

広東語の声調一覧と覚え方のイメージ

北京語の四声との違いと学習難易度

標準中国語(北京語・普通話)をすでに学習したことがある人にとって、広東語声調との違いや難易度は気になる点です。両者には歴史的な共通点がありながら、ピッチの広がりと音節構造に大きな違いがあります。

比較項目標準中国語(北京語)広東語
基本声調の数4声(+軽声)6声(+入声3声=9声)
平らな声調(平調)1つ(第1声のみ・高平)3つ(第1声・第3声・第6声)
音域の広さ比較的広い(高低の抑揚が大きい)全体に低めの音域が多く、小刻みな音階差がある
入声(詰まる音)消滅(他の四声に分散吸収)明確に残存(-p, -t, -kの閉鎖音)
音韻の厳格さそり舌音や母音変化が中心末尾子音(-m, -p, -t, -kなど)の区別が厳格

難易度の面から見ると、標準中国語は「第1声から第4声までの高低差がダイナミックで感情が乗せやすい」反面、広東語は「音階の幅が狭い中で第1声(高)・第3声(中)・第6声(低)の微妙な段差を精密にキープしなければならない」という難しさがあります。

ただし、日本語話者にとっては、広東語のほうが漢字の音読み(漢音・呉音)と語尾が一致しやすい利点があります。例えば日本語で「イチ・ハチ・ジュウ(古音はフッ・ハチ・ジフ)」と促音化する漢字は、広東語でもそのまま入声(-t や -p)で終わります。

語彙の対応関係が直感的に掴みやすいため、声調の音階差さえ慣れてしまえば、リスニングの語彙定着は北京語より早いと感じる学習者も少なくありません。

普通話側のルールを復習したいときは、中国語の声調・四声の覚え方を読むと頭を整理しやすくなります。

日本人がつまずく平調と低音の発声法

日本語は音の高低差が少ない高低アクセント言語であるため、日本語話者が広東語を話すと「すべての声調が中間の高さ(第3声付近)に集まって一本調子になる」という現象が頻発します。特につまずきやすい2つの難所と、その物理的な解決法を解説します。

1. 第1声・第3声・第6声(高・中・低の平調)の出し分け

同じ「平らな音」である第1声・第3声・第6声を明確に区別するには、喉仏(のどぼとけ)の高さと息の圧力をコントロールすることが重要です。

この3つを練習するときは、詩(si1)→ 試(si3)→ 是(si6)と階段を下りるように発音し、逆に 是(si6)→ 試(si3)→ 詩(si1)と階段を上るドリルを繰り返すことで、喉の筋肉の固定位置を身体に覚えさせます。

2. 第4声(21・最低音)の響かせ方

第4声は広東語の中で最も低い音調です。多くの日本人学習者が「低すぎて声が出ない」「途中で声がかすれて消えてしまう」と苦戦します。

第4声を出すコツは、息を力んで押し出そうとするのをやめ、「ため息をつくように喉のテンションを完全に緩める」ことです。低い位置(調値2)から、うなずきながら「はぁ」と息を抜き落とす(調値1)感覚で発音します。

声帯の振動数が落ちてボーカルフライ(ガラガラとした低音の鳴り)が少し混ざるくらい脱力すると、自然な第4声の響きになります。

平調と第4声の発声のコツ
🔊第1声(高平)

喉仏を軽く上げ裏声手前の張り詰めた声で発声

🗣️第3声(中平)

余計な力を入れずリラックスした日常会話の地声

🔉第6声(低平)

喉仏を指1本分下げ息を緩めて太く重く響かせる

😮‍第4声(最低音)

ため息をつくように脱力しボーカルフライを混ぜる

高低差が曖昧になりやすい4つの声調の喉の使い方と息のコントロールです。

2音節連続の発音と5分間独学練習ルーティン

広東語の単語は2音節以上の複合語が大部分を占めます。1音節単体では正確に出せても、2つの音が連なるとピッチが引きずられて崩れてしまうケースが目立ちます。日常会話で通じる広東語声調を定着させるための実践ドリルを紹介します。

1. 2音節連続のピッチキープの注意点

2音節が続く場合、前の音の終わりの高さから次の音の始まりの高さへ、階段を飛び移るように正確にピッチを切り替える必要があります。

例えば香港(hoeng1 gong2 / 1声+2声)は、高い「ソ」の音を真っ直ぐ伸ばしたあと、一旦音を仕切ってから中間の「ミ」に入り、そこから一気に「ソ」へ引き上げます。前の1声の高さに引きずられて2声が高止まりしてしまわないよう注意が必要です。

また唔該(m4 goi1 / すみません・ありがとう / 4声+1声)は、喉の力を抜いた最低音(4声)から、急激に高いピッチ(1声)へと一気に跳躍します。この落差を大げさに表現することが、現地で聞き返されないための秘訣です。

2. 毎日の5分間声調ルーティンドリル

独学で広東語声調を安定させるために、以下のメニューを毎日声を出して行ってください。

  1. 基準音の確認(1分):三碗細牛腩麵(saam1 wun2 sai3 ngau4 naam5 min6)を音階を意識しながら3回ゆっくり唱える。
  2. 平調3段ドリル(1分):詩(si1)— 試(si3)— 是(si6)の高・中・低を5往復し、喉仏の位置を意識する。
  3. 入声ストップドリル(1分):一(jat1・舌先止め)、八(baat3・唇止め)、六(luk6・喉奥止め)をテンポよく発音し、息の密閉を確認する。
  4. 頻出2音節フレーズ(2分):早晨(zou2 san4 / おはよう / 2声+4声)、多謝(do1 ze6 / ありがとう / 1声+6声)、再見(zoi3 gin3 / さようなら / 3声+3声)など、日常挨拶をピッチの段差を意識して復唱する。

スマートフォンやパソコンの音声録音機能を使って自分の声を録音し、辞書アプリや現地のラジオ音声のお手本と聞き比べる習慣をつけると、ピッチのズレを自分で早期に矯正できます。

毎日の5分間声調ルーティン
1基準音確認(1分)

三碗細牛腩麵を音階を意識し3回唱える

2平調3段(1分)

詩・試・是の高・中・低を5往復する

3入声ストップ(1分)

一・八・六で語尾の息の密閉を確認する

42音節反復(2分)

早晨や多謝など日常挨拶の段差を復唱する

基準音の確認からフレーズ練習までを順番に行う日課ドリルです。

次の疑問毎日の発音練習を習慣化したいときは、広東語の勉強法と学習ツールの選び方で日々の進め方を確認してみてください。

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理解度チェック

Q1. 広東語が「9声6調」と呼ばれる理由は何ですか?

  1. 声調記号が9種類から6種類へ統合されたため
  2. 入声のメロディが舒声の3つと同じ高さであるため
  3. 基本となる平調が6段階存在するため
  4. 日常会話で使われる声調が6つに限られるため
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正解: B. 入声のメロディが舒声の3つと同じ高さであるため
入声の第7・8・9声は舒声の第1・3・6声とメロディ(調値)が同じで、身につけるべき音の上がり下がりのパターンが6種類であるためです。

Q2. 広東語の入声(-p, -t, -k)を発音する際の注意点は?

  1. 英語のように息を外へ破裂させて吐き出さない
  2. 語尾の音を母音と同じ長さで伸ばすようにする
  3. すべて舌先を上前歯の裏に当てて音を切る
  4. 喉の力を完全に抜いてため息のように発声する
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正解: A. 英語のように息を外へ破裂させて吐き出さない
英語のp, t, kのように息を破裂させて吐き出さず、息を内側に閉じ込めたまま音をパツンと切ることが最大のコツとされています。

Q3. 最も低い第4声(21)を自然に発声するコツは何ですか?

  1. 喉仏を指一本分引き上げて鋭い息を当てる
  2. 息を力んで押し出しながら音を低く保つ
  3. ため息をつくように喉のテンションを完全に緩める
  4. 頭のてっぺんに向けて細く強い声を響かせる
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正解: C. ため息をつくように喉のテンションを完全に緩める
第4声は力んで押し出さず、ため息をつくように喉の緊張を完全に緩め、うなずきながら息を抜き落とす感覚で発音します。

よくある質問

Q. 広東語の声調は6つですか、それとも9つですか?
メロディ(調値)としては実質6つです。伝統的には語尾が -p, -t, -k で短く詰まる入声(7・8・9声)を数えて9声と呼びますが、高さ自体は1声・3声・6声と同じです。
Q. 広東語の第4声と第6声の聞き分けが難しいです。
第6声は低めの位置を平らに保つ音(レの音)ですが、第4声はそこからさらにため息のように最低音へと落ちていく音(レからドへ下降)です。語尾が抜けて下がるのが第4声です。
Q. 広東語ピンインの数字は何を表していますか?
音節の末尾に付く1〜6の数字は声調番号を表します。例えば「gaau3」の「3」は第3声を意味します。入声(7〜9声)も現代の表記体系では末尾子音+1・3・6の数字で表されます。
Q. 声調を間違えると現地の人に通じませんか?
前後の文脈で推測してもらえる場合もありますが、広東語は同音異義語が非常に多いため、声調が1つ狂うと全く別の単語(料理名や数字など)に誤解されやすい言語です。
Q. 広東語声調にも北京語のような声調変化はありますか?
北京語の「3声+3声→2声+3声」のような大規模な規則的変調は広東語にはほとんどありません。基本的には辞書に載っている各文字の声調通りのピッチで発音すれば通じます。

2026年9月24日更新・モチタン辞典編集部